今から370年前の江戸時代のこと。
荒谷集落を流れる谷川が、金色に光り輝く、という事件が起こりました。
村人たちはみんな驚いて、不思議に思って川の淵に集まり、光のもとは何だろうと探してみましたが、川全体がぼうっと光っているので、どこから光が出ているのか見当もつきません。
こんな状態が何日も続いた5月8日、何人かの子どもたちがこの川で水遊びをしていました。
夕方になってほかの子どもたちが帰ったあと、7歳の男の子がひとりだけ残って、川の光のもとを探し始めました。
そしてとうとう、川の底に光るものを見つけ、抱え上げると、それはひょうたんのような形をした、30センチほどの石でした。
見ようによっては仏像のようにも見えるその石は、川から出してもなお明るく、光り輝いていています。
家に持って帰って棚に置くと、電灯などない時代でも、家じゅうが明るく金色に変わったほどでした。
そんなある日、才津村(いまの長岡市才津)から通りかかった魚売りが、話を聞きつけてやってきました。
『これはきっと金塊に違いないぞ。ここの村のもんは、これがどんな値打ちか知りもしないらしい。
ようし、うまいことだまし取ってやろう』
「これは珍しい石だなあ、我が家のじいさまが、きっと喜ぶに違いない。
ここに魚がたっぷりあるが、この魚ぜ~んぶと、交換してはもらえないか」
家のものは大喜びで、たくさんの魚と輝く石を交換してしまいました。
さて、うまく金塊をだまし取ったとうきうきして家に帰った魚売り。
さっそく棚に飾ろうとしましたが、手を離すとすぐに転がり落ちてしまい、何度上げなおしてもうまくいきません。
「ああ、これはもう、我が家には縁がなかったのだなぁ。残念だが、もとの家に戻そう」
荒谷の家に連絡を取ると、男の子の父親がわざわざ才津村までやってきました。
そこで魚売りの体験談を詳しく聞き、
「これはきっと薬師如来さまの像に違いない」
再び石を持って帰って、村人たちに伝え、ますます信仰心を厚くしたのでした。
さてその次の日、そこの家のお母さんが子どもの着物を洗って外に干していると、突然ひとりの見知らぬ小坊主さんが来て、洗濯物になにか字のようなものを書くなり、さっとどこかへ消えてしまいました。
洗濯物を汚されたお母さんは、怒って小坊主さんを探し回りましたが、どこにも見当たりません。
それどころか、文句を言いながら力いっぱい洗うのに、墨の文字は全く薄くもならないのです。
のちにお坊さんたちの集まりでこのことが話題になったとき、
「これはきっと『薬師』という梵字(古代インドの文字)であろう」
ということになりました。
それ以来、この梵字を浸した水を飲むと、どんな病気でも治った、ということです。



